地盤調査の一つであるサウンディングのうち、静的サウンディングに分類され、その中で最も利用頻度が多いと言えるのがスウェーデン式サウンディング試験です。
建設工事を行う上では必ず誰もが経験する必須の調査方法なので、調査を行うことで『どんなことが分かるのか』『その得たデータを用いて何ができるのか』『メリットとデメリットは何か』しっかりと理解を深めて工事に生かしていきましょう。
スウェーデン式サウンディング試験ってそもそも何?
スウェーデン式サウンディングとは、100kgのおもりによる荷重とスクリューの回転に対する土の抵抗を調べ、地盤の状況を把握する調査方法で、1900年代前半にスウェーデンの国有鉄道が地盤調査を行うために使われたのが最初となります。
その後1900年代後半に入った頃、国土交通省(当時の建設省)の堤防工事の地盤調査を行う際に、初めて日本で導入されました。
またこちらの調査方法は、日本工業規格(JIS)のA 1221に登録されています。(1976年に制定)
スウェーデン式サウンディング試験は、『SS試験』や『SWS試験』などの呼ばれ方をされています。
スウェーデン式サウンディング試験の目的は?
スウェーデン式サウンディング試験を行う目的は、構造物や建築物を地上に建てる際や、崩落しそうな斜面の保護を行う際、何らかの理由でその場所の地質を知らなければならない時などに、その対象となる地盤の硬さ、強さ、地層の状況、地質を知り工事を有意義なものにするために行われます。
地盤調査にはボーリング調査などいくつかの種類がありますが、その中でスウェーデン式サウンディング試験は『安く』『簡単に』『早く』地盤の状況を知りたい際によく用いられる調査方法です。
本試験の費用は一箇所あたり5万円〜で、一箇所あたりの所要時間は30分前後ほどになっています。
スウェーデン式サウンディング試験の方法は?
本調査は下図の器具を用いて行います。
スクリューポイントと呼ばれるドリル状のアタッチメントを、ロッドと呼ばれる鉄の棒の先に取り付けて、地面と垂直に貫入し調査を行っていきます。
まずロッドの地上に出ている部分に、5kgから最大100kgまでのおもりを取り付けて、その重さだけでどの程度沈むのかを測っていきます。
おもりの荷重のみで沈まなくなったら、今度は図ー1の①ハンドルを回し貫入をさせていきます。
その際ロッドについている1目盛(25cm)が沈むまでにハンドル何回を回転させたのかを記録していきます。ここで注意すべきは、ハンドルの回転数は半回転(180度)で1回とすることです。
ロッドの長さは1mなので、足りなくなったら継ぎ足していき、最大で10〜15mほどまで計測していきます。
また試験が終わりロッドとスクリューを引き抜く際、先端のスクリューポイントに付着した土も、その対象箇所の地質を知る重要な資料となりますので観察します。
試験結果の活用方法は?
試験で記録するデータは以下のものです。
- 5〜100kgの荷重による沈下量(沈下が止まったところで載荷を止める)
- 自重による沈下が止まった時のおもりの荷重
- 5〜100kgを載荷させた状態で25cm貫入するまでのハンドルの回転数(半回転)
- ロッドを引き抜いたあとスクリューポイントに付着した土の状況
これらのデータをもとに以下で解説する『換算N値』『一軸圧縮強度』『粘性土の粘着力』を求めることで対象地盤の評価を行っていきます。
換算N値について
地盤の強さを判定する値として、ボーリング調査(標準貫入試験)によって求められるN値があります。
N値は地質評価としての信頼度が高く、過去の蓄積データも多いことから世界標準となっています。
スウェーデン式サウンディング試験においても、本来のN値に準じた『換算N値』というものを求めることで地質を評価していきます。
換算N値の算定式
換算N値の算定式は『粘性土』『砂質土』の2パターンあり、それぞれ少しずつ式が異なります。
- 粘性土 → 3Wsw+0.5Nsw
- 砂質土 → 2Wsw+0.067Nsw
ここでWswはおもりの荷重、Nswは貫入量1mあたりの半回転数です。
一軸圧縮強度について
一軸圧縮強度とは、側圧を考えずに鉛直方向だけの圧縮荷重を地盤にかけた時の強度のことを言います。
一軸圧縮強度の算定
一軸圧縮強度は以下の式によって求められます。
qu=45Wsw+0.075Nsw(kN/m2)
粘着力について
粘着力については以下の式によって求められます。
C=qu/2(kN/m2)
スウェーデン式サウンディング試験のメリット・デメリットは?
次にスウェーデン式サウンディング試験を行うメリットとデメリットについて解説していきます。
スウェーデン式サウンディング試験のメリットは、
- 調査期間が短く、安価である。
- 足場などを組む必要がなく、狭い場所でも作業可能。
- 周りへの騒音がない。
- 軟弱地盤の有無を把握できる。
- 複数点のデータを取ることも可能なので、より細かく調査範囲の地盤状況を調べることができる。
- 過去の蓄積データが膨大にある。
- 試料の採取も可能である。
スウェーデン式サウンディング試験のデメリットは、
- 調査深さは10〜15mが限界。(それ以上は摩擦などにより誤差が大きくなる)
- 礫や岩などに当たるとそれ以上貫入できなくなる。
- 試験者によって、それぞれの地層の厚みや状況の判定に差が生じやすい。
まとめ
ここまで、スウェーデン式サウンディング試験について解説してきました。
冒頭でも書きましたが、本試験は安価かつ早く行えるため、利用頻度が非常に高い試験です。
しっかりと内容を理解して、調査結果が有効に活用できるようにしていきましょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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